• 完全子法人株式等に係る配当に源泉徴収したことにより生じた還付加算金が3億6,563万円に。会計検査院が財務省に源泉徴収制度の在り方の検討を求める。
  • 同族会社の留保金課税の適用範囲の検討も財務省に提言。

完全子法人株式等及び関連法人株式等に係る受取配当等に対する源泉所得税相当額について所得税額控除を適用したことにより還付金が生じていた延べ1,262法人に支払われた還付金は8,898億6,092万円であり、このうち還付加算金が生じていた延べ888法人に支払われた還付加算金が3億6,563万円にのぼることが会計検査院の「令和元年度決算検査報告」(11月10日公表)で明らかとなった(検査対象は平成29年度から令和元年度)。

会計検査院は、原則として全額に法人税が課されていない完全子法人株式等及び関連法人株式等に係る配当等の額に対して源泉徴収を行っていたことから、企業グループ内において納税に係る一時的な資金負担が生ずるとともに、配当等に対する税務署における源泉所得税事務が生じたり、源泉所得税相当額について所得税額控除が適用されることにより還付金及び還付加算金並びにこれらに係る税務署の還付事務が生じている状況は、源泉徴収制度の趣旨に必ずしも沿ったものとはなっていないと指摘。財務省に対して、配当等に対する源泉徴収制度の在り方について検討を行っていくことが必要としている。

また、会計検査院は留保金課税の適用範囲について公平性等を高めるよう検討を行っていくことも財務省に求めている。特定同族会社が子会社で、中小特定同族会社が親会社である場合には、当該特定同族会社は一定額以上の留保金額に対して留保金課税が課されるが、親会社である中小特定同族会社には留保金課税は適用されず、子会社である特定同族会社からの配当についても受取配当等の益金不算入制度により法人税は課されない。このため、子会社である特定同族会社は親会社である中小特定同族会社へ配当することにより、留保所得金額を減らして留保金課税を課されないようにし、また、親会社である中小特定同族会社は留保金課税が適用されないため、自らの株主へ配当しなかったり、配当額を少なくしたりして利益を社内に留保することが可能であると指摘。親会社である中小特定同族会社が子会社である特定同族会社の株式の100%を保有している完全支配関係にある40法人について検査したところでは、37法人が親会社である中小特定同族会社に配当を行っていたとしている。