• 令和元事務年度の所得税調査、新型コロナウイルスの影響で実地調査の件数(59,683件)が減少。
  • 富裕層に対する調査件数(4,463件)も減少した一方、申告漏れ所得金額(789億円)、追徴税額(259億円)は平成21事務年度以降最高の数値に。

国税庁は11月27日に「令和元事務年度における所得税及び消費税調査等の状況」を公表した。所得税等の実地調査の件数は59,683件と、前事務年度(73,579件)より減少した。実地調査のうち「特別調査・一般調査」(高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を対象に行う調査)は42,601件(前事務年度50,130件)、「着眼調査」(申告漏れ等が見込まれる個人を対象に短期間で行う調査)は17,082件(同23,449件)と減少。また、「簡易な接触」(文書、電話による連絡や来署による面接を行い、申告内容を是正するもの)の件数も371,240件(同537,076件)と減少している。結果として、所得税等の調査等の合計件数は430,923件と、前事務年度に引き続き平成23事務年度以降で、最も低い件数となった。同庁によると、調査件数が減少したことは新型コロナウイルス感染症の影響によるものであるとしている。

国税庁の主要な取組の1つである富裕層に対する調査状況をみると、令和元事務年度における調査件数は4,463件(前事務年度5,313件)と減少した一方で、申告漏れ所得金額は789億円、追徴税額は259億円となり共に平成21事務年度以降で最高の数値となった。東京局では、CRS情報を活用したことで、海外での資産運用及び不動産所得の申告漏れがあったことを把握したとして、約6,800万円(重加算税無)を追徴課税した事例などがあった。

また、譲渡所得の調査等の状況では、13,221件の調査が行われ、そのうち申告漏れ等のあった件数は10,001件であった。1件当たりの申告漏れ所得金額は836万円と、前事務年度(734万円)より13.9%増加した。同庁によると、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、調査件数や申告漏れのあった件数などは減少しているが、高額・悪質と見込まれる事案を優先して調査を実施したため1件当たりの申告漏れ所得金額は増加しており、効果的・効率的に調査を実施できたとしている。

このほか、消費税無申告者に対する調査については8,329件の実地調査(特別・一般)を実施しており、1件当たりの追徴税額は192万円、追徴税額の総額は160億円となっている。1件当たりの追徴税額は、平成23事務年度以降で最も高い数値となった。