• 東京高裁第24民事部は令和4年3月24日、取得費に加算される相続税額(措置法39条)の金額が争点となった事案について、「取得費加算額(譲渡所得に係る『当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額』)は、一義的に明確である。」などと判示し、納税者の控訴を棄却。
 納税者(控訴人ら)は、養母(被相続人)から相続により取得した土地に借地権を設定した対価として受領した権利金に係る所得を分離課税の長期譲渡所得の金額に計上して所得税等の確定申告をした。これに対し所轄税務署長は、取得費の額に加算される相続税額(以下「取得費加算額」という。)の計算に誤りがあるとして、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。これを不服とした納税者は、本件各更正処分の一部及び本件各賦課決定処分の取消しを求めて提訴した。原審(東京地裁)は納税者の請求を棄却している。
 原審では、取得費加算額の計算に係る「当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額」が、相続税評価額(貸家建付地)に借地権割合を乗じた価額(国の主張)となるのか、相続税評価額(貸家建付地)(原告の主張)となるのかが争点となったが、控訴人らは控訴審において、処分庁により複数の根拠(①更正処分時に「貸家建付地」×90%、②審査請求時に「貸家建付借地権」)が示されたなどとして、「租税特別措置法施行令(措置令)25条の16第1項2号の『当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額』との文言は、課税要件明確主義に反する。」などの補充主張を行った。
 これに対し東京高裁(中山孝雄裁判長)は以下のとおり判示し、本件控訴を棄却する判決を言い渡した。
 「(前略)このような措置法39条1項(本件特例)の趣旨や、改正の経緯に照らすと、措置法39条1項を受けた政令である措置令25条の16第1項2号の『当該譲渡をした資産の当該課税価格の計算の基礎に算入された価額』とは、相続税の課税価格の計算の基礎に算入された価額のうち、当該譲渡をした相続財産に対応する部分の価額を意味することは、一義的で明確であるといえるから、その文言が、課税要件明確主義に反するということはできない。」「課税庁が、課税処分を検討する過程で、本件各更正処分と異なる見解を示したことがあるからといって、そのことをもって『当該課税価格の計算の基礎に算入された価額』の文言が課税要件に反するということはできない。」
(情報提供:株式会社ロータス21)