• 「SO・プール」が、今通常国会における産競法改正により実現へ。ただし、税務上の取扱いが普及のネックとなる可能性。

ストックオプション(以下、SO)・プールとは、あらかじめ一定規模のSOの発行枠を設定し、役職員に対して柔軟にSOを付与する仕組みであり、米国で普及している。日本の会社法では、SOの詳細について原則として株主総会で決議する必要があり、例外として取締役会に一部の決定を委任できるが、株主総会の決議による取締役会への委任の有効期間が「1年以内」(SOの割当日が株主総会決議の日から1年以内)とされているため、1年以上先のタイミングでの付与に備えて事前にSOを発行しておくことはできない。

その結果、例えば上場まで複数年を要した場合、①複数回の株主総会でSO発行決議を行わざるをえない、②役職員の入社時期次第でSOの権利行使価額に大きな差が生じる、③付与したSOに見合う貢献がなかった、などの不都合が発生している。こうした不都合を解消するために活用されていたのが信託型SOだったと言えるが、本誌が昨年2月にスクープした通り、税務当局が信託型SOを権利行使時点で課税対象にする旨のQ&Aを明らかにして大きな波紋が広がった。信託型SOの一件を受け、日本でも米国のようなSO・プールの制度の導入を望む声が高まる中、政府は、今通常国会に産業競争力強化法(産競法)の改正案を提出し、同法を利用したSO・プールの実現を目指している。

SO・プールは、利用可能な会社が「設立の日以後の期間が15年未満の株式会社のみ」とされ、また、「株主の利益の確保に配慮しつつ産業競争力を強化することに資する場合として経済産業省令・法務省令で定める要件に該当すること」(現時点では詳細不明)かつ「経済産業大臣及び法務大臣の確認を受けること」が求められる。ただ、産競法改正案に基づくSO・プールでは、株主総会において権利行使価額等(SOの行使に際して出資される財産の価額又はその算定方法)や権利行使期間(SOを行使できる期間)を定める必要がない。また、株主総会の決議による取締役会への委任の有効期間(1年)を定める会社法239条3項も適用されない。

この改正が実現すると、一度の株主総会で「当該新株予約権の目的である株式の数」など大枠だけを決議しておき、役職員等には数年後に貢献度合いに応じて相互に納得感のある割当を行うことができる。ただし、現時点では税務上の取扱いが不透明であり、普及のネックとなる可能性がある。

(情報提供:株式会社ロータス21)