• 請求人が分割納付誓約書に基づく納付を継続している中で、差押財産を公売に付すことは、時期を誤った違法又は不当な処分であるかが争われた事案(令和5年8月21日裁決)。

本事案は、原処分庁が行った差押財産の公売について、公売に付すべき時期を誤った違法又は不当なものであるかが争われたものである。原処分庁は、各不動産が車庫等として利用可能な唯一の不動産とは認められないなどの事情を考慮すれば、公売に付すべき時期について裁量権の範囲内で合理的に行われたものであるから違法又は不当な処分ではないと主張。一方、請求人は、分割納付誓約書に基づく納付を継続していることからすれば、分割納付計画の期間中に行った公売公告処分は、時期を誤った違法又は不当な処分であると主張した。

審判所は、換価の猶予(徴収法151条、151条の2)では、直ちに財産を換価することにより滞納者の事業が壊滅することが見込まれるときに、その事業が立ち直るまで差し押さえた財産の換価処分を猶予し、猶予期間の滞納国税の分割納付を認めているとした上で、換価に関する時期の判断に当たっては、滞納者の実情を踏まえ、個々の事案における自主納付の見込み、公売による換価額、差押財産の公売による滞納者への影響等、諸般の事情を考慮して判断するのが相当であるとした。

本件については、請求人には自主納付による完納の見込みがあったとはいえず、各不動産の換価額として相応の金額が見積もられていたことなどにより、必ずしも事業の継続を不可能にするものとはいえないことなどの事情を考慮すれば、各不動産を公売に付する時期について、原処分庁に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったとは認められず、公売公告処分は適法であるとの判断を示した。

しかし、請求人は、分割納付誓約書の誓約期間内に納付計画どおりの自主納付を継続する蓋然性が高く、また、各不動産を直ちに換価しなければ換価額が下落するなどの理由もないと指摘。原処分庁の徴収担当職員が、誓約期間内に各不動産が公売に付されることはないとの請求人の期待を排斥しなかったことにより、各不動産の代替土地を確保し得る機会及び期間が事実上なくなり、公売による請求人の事業に対する影響がより大きくなったなどの事情があるとし、本件公売公告処分は、公売を付する時期の判断において、その裁量権の行使が、差押財産の換価に関する制度の趣旨・目的に照らして合理性を欠く不当な処分であるとして原処分の全部を取り消した。

(情報提供:株式会社ロータス21)