• 東京地裁、太陽光発電を行うための各取組の事業該当性が争われた事案で、事業を反復継続的に遂行するために必要な客観的な基礎を完全に欠いており、「事業」を開始したとはいえないと判断(令和6年3月13日判決)。

原告が取締役を務める関係会社2社はE社を介して太陽光発電を行っていたところ、原告自身も個人として太陽光発電を行うため、E社との間で、太陽光発電に係る土地の取得、設備の設置、発電、売電(電力を有償で小売電気事業者に供給すること)を行うために必要な各種の契約を締結し、事業の準備を進めていた(本件各取組)。

しかし、平成30年頃からE社の代表取締役A氏と連絡が取れなくなり、E社は平成31年2月に破産手続を開始し、A氏は令和3年、架空の太陽光パネルの設置を持ちかけて工事代金を騙し取ったとの嫌疑により逮捕され、その後、公訴を提起された。原告は、事業として太陽光発電を行っていたとの認識の下、所得税等の確定申告を行ったが、処分行政庁から「事業」には該当しないとして更正処分等を受けたため、訴訟を提起するに至った。

原告は、スキームの内容に照らすと、開始されれば「事業」に該当することになるところ、借入れ等の重要な行為がされていた以上、本件各取組は既に開始されていたといえるから、「事業」に該当すると主張した。

これに対し東京地裁は、①原告は、本件各取組を実施するために必要不可欠な土地も太陽光発電設備も一切取得できなかった、②E社との間で発電事業者としての地位を購入する旨の契約を締結したが、実際にはその地位を取得することができなかった、③E社からの受領額は、本件各取組が原告の想定どおりに進捗しているかのような虚偽の外観を取り繕うためにE社が行っていた送金をその情を知らずに原告が受領していたものにすぎない、④原告からE社への送金額は、実際にどのような使途に充てられたのか全く不明、などと指摘した。

その上で、これらのことからすると、本件各取組は、これらを反復継続的に遂行するために必要な客観的な基礎を完全に欠いていたといわざるを得ず、反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務であったということはできないと結論づけた。

そして、原告が主張するような、本件借入れ等の資金調達やE社への資金の拠出等をしていたというだけでは、「事業」を開始したということはできないとして、その主張を斥けている。

(情報提供:株式会社ロータス21)