• 政府税制調査会が個人所得課税の見直しに関する具体的検討に着手。
  •  給与所得控除の見直しを求める意見、諸外国で採用されている「消失型の所得控除」や「ゼロ税率」を検討すべきとの意見が相次ぐ。
  • 中里会長、来年夏頃の中期答申を見据え、11月頃に個人所得課税についての論点整理を行う方針。

政府税制調査会(会長・中里実東大大学院教授)は10月1日、個人所得課税の見直しに関する具体的な検討に着手した。

政府税調では、今年最初となる7月2日の会合から前回会合(9月25日開催)までの9回にわたり、経済社会の構造変化に関する確認作業が行われていた。10月1日の会合は、この確認作業のなかで提示された「人口減少への対応、働き方の多様化を踏まえた水平的公平の確保、世代間・世代内の公平、所得再分配機能の回復」などという視点を踏まえ、日本の所得税の歴史をふりかえり、主要諸外国の所得税との比較による今後の検討課題の洗い出しが行われた。

会合では、所得税の各種控除のうち、給与所得控除の見直しに関する意見が相次いで出された。

具体的にみると、土居丈朗委員(慶應義塾大学教授)は、国際比較すると日本の給与所得控除等の割合が米国や欧州各国と比べ高い点を指摘した。また、佐藤主光委員(一橋大学大学院教授)は、過去の税制改正で給与所得控除が拡充されてきた経緯を踏まえ、給与所得控除は見直しの対象になると指摘。佐藤委員は、仮に給与所得控除を見直すのであれば、子育て世帯や若年者等を対象とする人的控除に振り向けていく方法もあると発言した。

そのほか、会合では、アメリカなどで採用されている「消失型の所得控除」(所得が高くなるほど控除額が逓減・消失するもの)やドイツやフランスで採用されている「ゼロ税率」(一定の収入金額まで所得税率をゼロとするもの)を日本に導入すべきか否かを検討すべきという意見が相次いだ。

総会後の記者会見で中里会長は、来年夏頃の中期答申とりまとめを見据え、今年の秋(11月頃)に個人所得課税についての論点整理を行う方針を示した。

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(情報提供:株式会社ロータス21)