• 与党税制協議会が平成29年4月からの軽減税率制度導入で一致。11月中旬には大筋合意を目指す。
  • EU型インボイス方式を導入も当面は簡素な方法を採用。
  • 財源は総合合算制度の見送りで約4,000億円。公明党はさらなる上積みを求める。

自民党の宮沢洋一氏が税制調査会長となって初めての与党税制協議会が10月27日に開催された。同日の同協議会では、①平成29年4月から制度の混乱なく軽減税率制度を確実に導入すること、②益税批判に対応するためEU型のインボイス方式を導入、③社会保障と税の一体改革の原点に立ち、安定的な恒久財源を確保し、その範囲内で実施することで一致した。11月20日からは平成28年度税制改正大綱に向けた検討が始まるため、11月中旬頃には大筋で合意したい意向だ。

与党税制協議会では、平成29年4月から軽減税率制度の導入で合意したが、まだ多くの問題が残されている。益税批判を招かないようEU型のインボイス方式を導入することで一致したが、制度的に平成29年4月からの導入は不可能であるとし、簡素な方法を採用するとしている。

公明党が求める区分経理に対応した請求書等保存方式に売手の請求書交付義務等を追加した方式(区分記載請求書等には、商品毎の税額の記載は要さず、仕入税額控除を行う際にも税額の積上げ計算を必要としない仕組み)については、EU型のインボイス方式と比べると事業者負担が少ないほか、免税事業者からの仕入税額控除も可能になる点などのメリットはあるものの、500万を超えるといわれる免税事業者に新たに適用税率を判断させることになるため、やはり多大な事務負担が生じることが懸念されている。

また、準備期間が1年間では時間的に導入することは難しいとの判断からさらに簡素な方法を模索する方向だ。当面は事業者負担を軽減することを優先し、益税問題には目をつぶらざるを得ない状況といえよう。

財源の問題も両者の主張に食い違いがある。自民党は総合合算制度を見送ることで、約4,000億円の財源を捻出することを想定。税と社会保障の一体改革の範囲内で軽減税率制度導入による財源としたい考えだ。一方、公明党は現行の簡素な給付措置や児童手当などを廃止することにより約4,000億円を上積みしたい意向。さらには所得税等の増税も視野に入れている模様。対象品目をどこで線引きするかによって財源の捻出自体も大きく変わってくることになる。

(情報提供:株式会社ロータス21)