• 通則法の改正によって減少していた実地調査が回復傾向。ただし、改正以前の件数には及ばず。
  • 富裕層への調査で、申告漏れ所得金額及び1件当たりの申告漏れ所得金額が、対前年比で約2割増加。

国税庁が10月29日に公表した「平成26事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について」によると、所得税の実地調査件数は6万7,774件(平成25事務年度は6万1,635件)と昨事務年度から一転して増加した。近年の実地調査件数は、平成25年1月から施行された改正通則法により、運用上の取扱いであった事前通知や処分理由の記載等の税務調査手続が法定化されたことに伴い、平成24事務年度及び翌25事務年度の2年連続で急激に落ち込んでいた(表参照)。平成26事務年度においても、平成23事務年度と比べて大幅に減少している状況に変わりはないが、職員の習熟及び事務のICT化により、件数自体は回復傾向を示していて、通則法の改正当初と比較し、その影響は薄まりつつある。

一方、所得税における簡易な接触は67万2,394件(同83万7,142件)と大幅に減少する結果となった。大きな要因として、平成25事務年度で多数発生していた復興特別所得税(平成25年1月から適用)の記載漏れが減少したことが挙げられている。

注目すべき点の1つである富裕層の調査では、調査件数が4,361件(対前年比104.4%)と微増であったが、申告漏れ所得金額は390億円(同125.3%)、1件当たりの申告漏れ所得金額は894万円(同120.0%)と、最近の減少傾向から大きく増加する結果となった。また、株式等の譲渡所得の調査等では、調査等件数は6,358件(同147.4%)、申告漏れ等の非違件数が4,900件(同161.7%)とそれぞれ大幅に増加している。株価上昇による譲渡益の発生しやすい環境や、平成25年12月末で上場株式等に関する軽減税率が廃止されたことが、今回の調査等件数の増加に影響している。

なお、消費税に関しては、実地調査(3万5,952件)と簡易な接触(5万90件)ともに増加し、調査等合計(8万6,042件)は平成25事務年度より約1万件余り上昇した。

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