• 日本法人が訪日旅行ツアーを主催する海外旅行会社に提供した取引(訪日旅行客が国内で受ける飲食、宿泊等の企画・手配)、東京高裁も輸出免税に該当しないと判断し、日本法人の請求を斥ける(平成28年2月9日判決)。
  • 日本法人が提供する取引は輸出取引または輸出類似取引に該当せず。

海外からの訪日客によるインバウンド消費が年々拡大するなか、今回の裁判事例で問題となったのは、旅行会社である日本法人(納税者)が海外旅行会社が主催する訪日旅行ツアーに関し同社との間で行っていた取引(以下「本件取引」)が輸出免税取引に該当するか否かという点だ。

本件取引は、海外旅行会社が訪日旅行客を募集しその旅行客を日本に送客する役割を担う一方で、日本法人は訪日ツアーのうち、国内旅行部分の日程、訪日旅行客が国内で受ける飲食場所、宿泊先などの役務内容などに関する計画を作成し、その内容の役務を訪日旅行客に提供することで、海外旅行会社から対価の支払いを受けるというもの。日本法人は、海外旅行会社から受領した対価を輸出免税取引とする一方で、訪日ツアーにおける国内での飲食、宿泊などについて日本法人が観光会社やホテルなどに支払った料金を課税仕入れに計上した。これに対し税務署は、日本法人が海外旅行会社から受領した対価(国内での飲食、宿泊などの役務提供部分)は輸出免税取引に該当しないとする課税処分を行っていた。

この処分を不服とする日本法人は、本件訴訟のなかで、本件取引は旅行パッケージ商品(国内の観光会社やホテルなどから飲食、宿泊などの役務提供を受ける権利を確保し、自らの企画でこれを組み合わせて組成したもの)という資産の販売であり、「輸出として行われる資産の譲渡」(消法7①一)であるため、輸出免税取引であるなどと主張していた。

しかし、これに対し東京高裁は、本件取引は日本法人が海外旅行会社に対し「国内における飲食、宿泊、運送等の旅行素材の組合せを企画し各種サービス提供機関を手配することによりこれを海外旅行会社が確実に利用できるようにする」という役務を提供するものであると認定し、輸出取引(消法7①一)には該当しないと指摘。また、高裁は、海外旅行会社が日本法人からの役務提供により直接享受する便益は旅行素材(飲食、宿泊等)が所在する国内でなければ享受することができないため、輸出類似取引(消法7①五、消令17②七)にも該当しないと指摘し、地裁判決と同様に輸出免税取引には該当しないと判断した。

(情報提供:株式会社ロータス21)