• リストリクテッド・ストックの設計次第では、業績要件を含む株式報酬にも損金算入の道。
  • 付与する株式数は変えず、付与株式の譲渡制限を解除する条件として「一定の業績の達成」を課し、これを達成できなかった場合には付与した株式の一定割合を“没収”することとすれば、税務上も「事前確定届出給与」に。

法人税法上、役員報酬を損金算入するためには、それが「定期同額給与」「事前確定届出給与」「利益連動給与」のいずれかに該当する必要がある。これは、役員報酬が「株式報酬」という形をとっていたとしても変わらない。

そこで平成28年度税制改正では、一定期間の譲渡制限が付された株式報酬である「リストリクテッド・ストック」を「事前確定届出給与」の一種として取り扱い、損金算入を認めることとしている(なお、ここでいうリストリクテッド・ストックは、会社法上の問題点をクリアするため、役員に付与した金銭報酬債権を現物出資財産として払い込み、役員に対して株式を発行するスキームによることになる)。

これに対し、リストリクテッド・ストックとともに欧米で普及しているパフォーマンス・シェアは、中長期的な業績目標の達成度合いに応じて付与株式数が変動するため、「事前確定届出給与」には該当し得ないうえ、「有報に記載される利益指標の数値が確定した後1か月以内に支払われる」といった利益連動給与の損金算入要件も満たせないことから、損金算入対象にならない。ただし、リストリクテッド・ストックの設計次第では、実質的なパフォーマンス・シェアを損金算入対象とすることが可能になる。

具体的には、付与する譲渡制限付株式の数自体は変えず、譲渡制限解除の条件として、一定の業績の達成などを課す方法だ。例えば、付与した株式の譲渡制限を解除する条件として、「譲渡制限解除時(例えば株式付与から3年後)における一定の業績の達成」を課し、当該業績を達成できなかった場合には、付与した株式報酬の半分を“没収”するといった仕組みにする。

この場合、付与した株式数自体は変わらず、あくまで「譲渡制限の解除」ができなくなるに過ぎないため、税務上も「事前確定届出給与」として取り扱われることになる。もちろん、こうした譲渡制限の解除条件も、株式報酬付与時に確定しておく必要があろう。

(情報提供:株式会社ロータス21)