• 請求人が行った賃借建物の改装工事をめぐり、同改装工事部分の除却損の損金算入時期が問題となった事案で、審判所が課税処分を全部取消し(平成27年11月30日)。
  • 過去に賃借建物の所有者変更も改装工事部分の所有権は請求人にあり。建物改装工事部分の所有権を請求人が放棄等した本件事業年度での除却損の損金算入を認める。

今回の裁決事例で問題となったのは、建物を賃借していた請求人(法人)が行った改装工事をめぐり、その改装工事部分である固定資産(2階にあるシャワー室や美容室などの改装工事に関するもの。以下「本件2階改装部分」)の除却損を本件事業年度(平成25年2月期)で損金に算入することができるか否かという点だ。

事実関係をみると、エステ事業を営む請求人は、賃借していた本件建物(1階部分は美容室とエントランスホール、2階部分は美容室、シャワー室、サウナ室など)について、平成13年2月期中に本件2階改装工事を行い、2階改装費として約813万円を支出していた。

その後、請求人は、本件建物が新たな所有者(C社)に売却された平成24年10月以後、本件建物を使用することができなくなったことを理由に、その売却日を含む本件事業年度(平成25年2月期)において本件2階改装部分の除却損(約628万円)を損金に算入していた。

これに対し原処分庁は、審査請求のなかで、本件建物が平成15年7月に旧所有者(A社)から新所有者(B社)に売却されて以降、請求人は本件2階改装部分の所有権を有しているとはいえないなどとして、本件2階改装部分の除却損は本件事業年度(平成25年2月期)で損金算入することはできないなどと主張していた。

原処分庁の主張に対し国税不服審判所は、まず、本件2階改装部分は本件建物と一体となるものではなく本件建物とは別個の造作であると認められるため、本件2階改装部分の所有権は請求人が有し、請求人がこれを事業の用に供していたと認定した。

次に、審判所は、本件建物が売却された平成24年10月に請求人がその所有権を放棄して建物の買主(C社の代表取締役)にその後の処分を委ねたものと認められるため、そのときに本件2階改装部分の除却損が生じたことになると指摘。

そのうえで、審判所は、本件2階改装部分の除却損の額は本件事業年度(平成25年2月期)の損金に算入すべきものであると判断し、原処分庁による課税処分の全部を取り消した。

(情報提供:株式会社ロータス21)