• 複数事業を営む統括会社の「主たる事業」の判定で、名古屋高裁が「地域統括業務は株式保有業と別個の独立の業務とはいえない」と断言。
  • また、「主たる事業」の判断に当たって所得金額等を重視すべきことは当然とし、地裁判決から一転、国の主張を全面的に支持。
  • 納税者側は上告。

本事案は、タックスヘイブン対策税制の適用除外要件における「主たる事業」の判定方法が争点となったもの。電子部品会社の特定外国子会社等である地域統括会社が「2以上の事業」を営んでいたところ、税務当局が「主たる事業」の判定を所得金額に占める株式保有業の割合等によって行った結果、「主たる事業=株式保有業」であると認定、本件統括会社を同税制の適用対象とする旨の課税処分を行った。

名古屋地裁(平成26年9月4日判決)は、当該課税処分に対し「たとえ株式の配当による所得金額が大きいとしても、株式保有以外の実体的な事業活動が現実に行われており、当該事業活動に相応の経営資源が投入されている場合には、事業基準を満たすと解することこそが、タックスヘイブン対策税制の制度趣旨にかなう」と判示、国の主張を退けていた。

これに対し高裁は「地域統括業務は株式保有事業に含まれる一つの業務にすぎず、株式保有業と別個の独立の業務とはいえない」と断言、納税者側敗訴の判決を下している(平成28年2月10日判決)。

また、税務当局が「主たる事業」の判定を地域統括会社の収入や所得金額に占める株式保有業に係る収入や所得金額の割合によって行ったことについては、「会社は営利法人であり、利益を上げることを目的として、集めた資本等を経済的合理性があるように運用しているのであるから、「主たる事業」の判断に当たって、当該事業のために保有している財産の資産総額に占める割合や当該事業による所得金額を重視すべきことは当然」とし、地裁から一転、国の主張を全面的に支持している。

さらに高裁は、地域統括業務について、「海外に地域統括業務を行う子会社を設立し孫会社の株式を保有させる必要はなく、本社が株式を保有して地域統括業務を行えば足りる」とした上で、「あえて子会社にこれを行わせるのは、低い税率の適用を受けるため」と断じている。

高裁判決を受け、企業の間では、特定外国子会社等で一過性の大きな株式売却益が発生した場合、主たる事業が「株式保有業」と判断されるのではないかとの懸念が広がる中、納税者側は上告している。

(情報提供:株式会社ロータス21)