• 請求人(法人)の代表取締役がその就任前からみなし役員に該当するか否かなどが争われた裁決事例で、みなし役員と認定した課税処分の一部を審判所が取り消す(平成28年3月31日裁決)。
  • 審判所、原処分庁が主張する事実(就任前に代表者として契約書に署名押印していたことなど)では経営従事要件に該当せず。

同族会社の使用人であっても、一定の株式保有等要件を満たし、かつ、「会社の経営に従事しているもの」に該当する場合には、法人税法上「役員」とみなされる(法令7二、同71①五イ~ハ)。今回の裁決事例で争点の1つとなったのは、損保代理業等を営む請求人の代表取締役がその就任前からみなし役員に該当するか否かである。

請求人の代表取締役は、平成21年2月に就任した代表取締役を同年9月に辞任したものの、平成24年4月に再度代表取締役に就任(本件で問題となった平成23年3月期・同24年3月期は会社法上の役員に就いていない)。請求人は、委任型募集人業務委託契約を締結していた代表取締役に支払った保険代理店の業務等に関する報酬を損金に算入していた。これに対し原処分庁は、平成24年1月17日付けの報酬計算等業務委託契約書に請求人の代表者として署名押印していること、税務調査の際に「実際は自分がいろいろ切り盛りをして会社をやっていた」旨申述していることなどから請求人の事業運営上の重要事項に参画していたことが認められるなどと認定し、請求人の代表取締役は再度就任する前の平成23年3月期・同24年3月期において「会社の経営に従事しているもの」(みなし役員)に該当するため、請求人が支払った報酬(役員給与)は定期同額給与等に該当しないから損金不算入になると主張した。

これに対し審判所は、税務調査の際の申述内容からはいつの時点でいかなる役割を担っていたのかが必ずしも明らかではなく、これを具体的に裏付ける証拠資料の収集がなされていないと指摘。また、業務委託契約書に請求人の代表者として署名押印している点については、代表者でないものが契約当事者となっているということにすぎず、その契約内容も重要な業務に係るものとはいえないため、代表取締役がその就任前に請求人の経営に従事していたことを裏付けるものとまでは認め難いと指摘した。そのうえで審判所は、代表取締役がその就任前に「経営に従事しているもの」(みなし役員)に該当すると認めることはできず、支払報酬料は役員給与に該当しないため損金に算入されると判断した。

(情報提供:株式会社ロータス21)