• 馬券払戻金の課税関係が問題となっていた税務訴訟の控訴審で、納税者が再び敗訴(東京高裁平成28年9月29日判決)。
  • 高裁、長期的・継続的かつ多数回馬券を購入したとしても、一般的な馬券購入行為と質的に異なるものではないなどとした地裁判決を全面支持。一体の経済活動の実態を有するものとはいえないと判断。

JRAの馬主でもある納税者は、競走成績・血統分析により各馬の実力と適性を把握し、馬主であることを生かした情報などをもとにほぼ毎週(土日)ごとに数十万円から数百万円に及ぶ馬券(3年間で約2億6,000万円)を購入し、その購入回数は年間1500回から2000回であった。払戻金の獲得回数は1年当たり100回から200回で、ほぼすべての開催日で払戻金を獲得していたものの、年単位の収支は赤字であった。

この納税者の馬券購入行為に対し東京地裁は、一般的な馬券購入行為と質的に異なるものであるということはできないなどと指摘したうえで、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益の発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮しても一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するものということはできないと判断。本件払戻金は一時所得に該当すると判断するとともに、外れ馬券の購入代金は必要経費に該当しないとしていた。この判決を不服とした納税者は、控訴審のなかで、本件払戻金が営利を目的とする継続的行為から生じた雑所得に当たるか否かの判断は馬券購入行為の期間、回数、頻度を最も重要な考慮要素とすべきであると指摘。納税者の馬券購入行為が長期的、継続的かつ多数回にわたり行われてきたことは明らかなため、本件払戻金は雑所得に該当すると主張した。

これに対し東京高裁は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当であるから、行為の期間、回数、頻度とその他の事情との間に考慮要素としての優劣はないと指摘。馬券購入行為の期間、回数、頻度に加え、購入馬券の選定方法等の事情も考慮しなければ、一連の馬券購入行為が営利を目的とする継続的行為であるか否かを適切に判断することはできないとした。そのうえで高裁は、納税者による一連の馬券購入行為が一体の経済活動の実態を有するものとはいえないという判断を示した東京地裁判決を全面的に支持したうえで、納税者の控訴を棄却した。

(情報提供:株式会社ロータス21)