• 賃貸用土地の造成等工事費用をめぐり、当該工事費用が不動産所得の必要経費に算入できるか否かを巡り審査請求。
  • 国税不服審判所、賃貸用土地の造成等工事費用の帰属は、当該工事の具体的内容に従って判断する必要があるとして、原処分庁の処分の一部を取消し。

今回紹介する裁決事例は、賃貸用土地の造成等の工事費用が不動産所得の必要経費に算入できるか否かが争われたもの。請求人は、不動産所得の金額の計算上、賃貸用土地の上に存する建物の解体及び造成等に係る費用を必要経費に算入し、確定申告を行ったところ、原処分庁は、本件工事費用は改良費(所法38①)に当たり、資産の取得費として取り扱うべきであるから、不動産所得の必要経費に算入することはできないとして更正処分等を行った。

同処分等に対し請求人は、本件工事費用は「総収入金額を得るため直接に要した費用の額」(所法37①)に該当すると主張。また、仮に当該部分に当たらなくても、「販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」(所法37①)に該当するため、不動産所得の必要経費に算入できるとして審査請求を行ったものである。

国税不服審判所は、本件工事費用の判断に際し、本件造成等工事を、①外溝造成工事(掘削、埋め戻し、整地等)、②土留め工事(隣接地との境界ブロックの撤去及び積み直し)、③乗入側溝改修工事(本件土地に接する県道の歩道部分の切下げ、復旧等)、④境界等整備(隣地との境界の明確化等)、⑤土壌汚染調査(土壌内の有毒物質の有無の調査)の5つに整理した。

その上で、賃貸用土地の造成等工事費用の帰属に関しては、当該工事の具体的な内容に従って判断する必要があるとして、本件造成等工事の①~⑤について事実認定を行った。その結果、①外溝造成工事は、本件土地の形質を変更し改良する工事であるから改良費に該当、一方、②土留め工事、④境界等整備及び⑤土壌汚染調査は、本件土地の改良及び価額を増加させる工事ではないから不動産所得の必要経費に算入されるとした。また、③乗入側溝改修工事は、その工事を行うことにより請求人が借地権設定契約に基づき賃料の取得という便益を受けることになるため、その効果は費用支出の日以後1年以上に及ぶものであるから、繰延資産に該当し、償却費が必要経費に算入されると判断。原処分庁の請求人に対する更正処分等の一部を取消した(平成28年3月3日裁決)。

(情報提供:株式会社ロータス21)