• 災害損失特別勘定の金額における益金算入時期を巡り裁決。
  • 審判所、被災資産の修繕費用は実際に修繕等を行ったときの損金算入とするも、東日本大震災での特殊異例の状況下を通達で配慮。
  • 過大な税額等が発生したとしても、請求人の処理は法人税法上適法な処理であるため、更正の請求を認めることはできないと判断。

本事案は、請求人が「東日本大震災に関する諸費用の法人税の取扱いについて」(法令解釈通達)の定めに基づき、東日本大震災のあった日の属する事業年度に損金算入した被災資産の修繕費用の見積額を翌事業年度において益金に算入した処理は誤りであったとして更正の請求をしたところ、原処分庁が更正をすべき理由はないとの通知処分を行ったものである。

請求人は、東日本大震災による甚大な被害により1か月位休業することを余儀なくされ、売上が急激に減少したにもかかわらず、平成24年5月期において災害損失特別勘定の金額を益金算入したことによって過大な税額等が発生することは、東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律の趣旨に矛盾すると主張。本来被災した資産の修繕工事を行った事業年度において益金算入すべきであるとした。

これに対し審判所は、被災資産の修繕費用は実際に修繕等を行ったときの損金に算入することが原則であるとしたが、東日本大震災が未曾有の大規模災害であるがゆえに、被災した企業が被災資産の修繕等を行うにしても、相当の長期間を要することになるといった特殊異例の状況下に置かれることになる旨指摘。本件通達は、東日本大震災により被害を受けた資産に係る修繕等のために要する費用で、東日本大震災のあった日から1年以内に支出することが見込まれるものとして適正に見積ることができるものについては、災害損失特別勘定に繰り入れて、被災事業年度の損金に算入することができることとしたものであるとした。

その上で、請求人が平成23年5月期に災害損失特別勘定の金額を繰り入れて損金に算入し、平成24年5月期で災害損失特別勘定の金額を取り崩して益金に算入した一連の処理は、法人税法上適法な処理であるとした。結論として、本件事業年度の終了の日までに延長確認申請書を提出することで、災害損失特別勘定の額を益金に算入する時期として修繕完了事業年度を選択することもできたのであって、請求人の選択誤りを理由とする更正の請求を認めることはできないとしている(平成28年3月23日、棄却)。

(情報提供:株式会社ロータス21)