• 勝訴した税務訴訟の弁護士費用が還付加算金(雑所得)の必要経費に該当するか否かが争われた事件で、納税者側が敗訴(東京地裁平成28年11月29日判決)。
  • 地裁、前訴弁護士費用は「総収入金額を得るために直接に要した費用」及び「その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」(所法37①)に該当せず。

本件で問題となったのは、納税者が勝訴した税務訴訟に関する弁護士費用(還付加算金に対応する部分)が勝訴により還付された還付加算金(雑所得)の必要経費に該当するか否かである。外国子会社合算税制の適用をめぐる税務訴訟(以下「前訴」)で勝訴した納税者は、過納金約7,300万円の還付を受けるとともに、還付加算金約1,600万円の支払いを受けた。勝訴した納税者は、前訴に関する業務を受任した弁護士に対して、成功報酬として約1,800万円(以下「前訴弁護士費用」)を支払った。

納税者は、還付加算金を雑所得としたうえで前訴に係る課税処分により納付すべき所得税等を納付するための借入金に係る支払利息約188万円を必要経費とする確定申告を行った。その後、納税者は、前訴弁護士費用も必要経費であるとして更正の請求を行ったものの、更正をすべき理由がない旨の通知処分を受けた。これを不服とした納税者は、国税不服審判所が審査請求を棄却したため、裁判所に対して通知処分の取消しを求めた。

裁判所は、所得税法37条1項前段が定める「総収入金額を得るために直接に要した費用」に該当するためには、特定の収入と直接の対応関係を有しておりその収入を得るために必要な費用であることを要すると解釈。また、所得税法37条1項後段が定める「その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用……の額」に該当するためには、所得を生ずべき業務と直接的な関連性を有しておりその業務遂行上必要な費用であることを要すると解釈した。そして本件については、還付加算金は前訴弁護士費用や前訴判決との間に間接的な関連性を有するということができるものの、前訴弁護士費用と直接の対応関係を有するものではないと指摘。前訴弁護士費用は「総収入金額を得るために直接に要した費用」に該当しないと判断した。また、前訴の提起及びその訴訟追行が還付加算金を生ずべき「業務」に該当するということはできないと指摘。「その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用……の額」にも該当しないと判断し、前訴弁護士費用は必要経費に算入できないと結論付けた。

(情報提供:株式会社ロータス21)