• 資産運用の委託先である金融機関から受領した和解金の所得区分、一時所得とした納税者の主張を斥けたうえで雑所得と判断(平成27年9月11日裁決)。
  • 和解金のうち非課税部分(運用元本の実損補填分)を超える額は、営利・継続的な資産運用における得べかりし利益の填補に相当。一時所得の要件を満たさず。

和解金の所得区分が税務紛争に発展するケースは珍しくないなか、今回紹介する裁決事案では、納税者(請求人)がその親族らとともに資産運用を委託した外国金融機関との間の和解により受領した和解金の所得区分が「雑所得」と「一時所得」のいずれに該当するかが問題となった。

納税者が受領した和解金は、納税者が外国金融機関に委託した資産に損失が生じたことなどを理由に支払われたもの。資産の損失は、納税者が運用担当者に対し一定の利回りが約束されたMMFによる運用を委託していたものの、運用担当者の判断でFX取引やレバレッジ取引などを含む運用がなされていたことにより発生していた。

この和解金の所得区分に関し納税者は、一時所得とする修正申告をしたものの、原処分庁は運用元本の実損補填分を超える部分を雑所得と判断したうえで、納税者に対し所得税更正処分等を行った。

この課税処分を不服とする納税者は、審査請求のなかで、和解金は不法行為により発生した損害に起因する元本補填額、損害賠償金、慰謝料および得べかりし利益を補填する趣旨を含んだ紛争解決金であり、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」および「労務その他の役務または資産の譲渡の対価としての性質を有するもの」のいずれにも該当しないため、雑所得ではなく一時所得であると主張した。

これに対し国税不服審判所は、まず、一定の年複利の元利金の額に満つるまでの範囲において授受された本件和解金は実損額および得べかりし利益の賠償に相当する損害賠償金に属する性質の金員として授受したものとみるのが合理的であると指摘した。

そして、この点を踏まえ審判所は、和解金収入のうち所得税法9条1項17号に規定する非課税部分(運用元本の実損補填分)を超える額は営利を目的とする継続的な資産運用における得べかりし利益の填補に相当する損害を賠償するものであり、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得」(所法34①)に該当しないため、一時所得であると認めることはできないとしたうえで、納税者が受領した和解金は雑所得に該当すると判断した。

(情報提供:株式会社ロータス21)