• 株式報奨制度により請求人が無償で取得した株式の収入すべき時期が問題となった事案で、審判所が課税処分の一部を取り消す(平成27年10月15日裁決)。
  • 審判所、本件株式について原処分庁が主張するような譲渡制限があったと認めるも、配当請求権がある点から本件株式の付与日の属する年度が収入すべき時期と判断。

株式報酬の課税関係が税務紛争に発展するケースが少なくないなか、今回の裁決事例では、請求人が株式報奨制度により無償で取得した本件株式に係る収入すべき時期はいつであるかという点が問題となった。

事実関係をみると、請求人は、株式報奨制度により、平成22年12月にケイマンLDC(有期限会社)の株式(以下「本件株式」)を無償で付与された後、米国LLCとの間で平成24年および平成25年中にそれぞれ取り交わされた本件購入同意書に基づき、本件株式を米国LLCに売却した。

請求人は、審査請求のなかで、本件株式の収入すべき時期は本件株式の付与日(平成22年12月)の属する平成22年分であると主張。これに対し原処分庁は、米国LLCが請求人に対して本件株式を売却させる権利を行使(以下「本件権利行使」)するまで本件株式を処分することが不可能であったため、本件株式の経済的価値を本件株式の付与時点で取得したと評価することはできないと指摘。原処分庁は、本件株式に関する権利が確定したのは本件権利行使の時点である本件購入同意書の各日付であるため、平成24年分および平成25年分が収入すべき時期であると主張した。

国税不服審判所は、まず、株主としての権利(利益配当請求権および残余財産分配請求権等)がない場合や、その権利が形式的なものに過ぎず、あるいは著しく制限されているなどの特段の事情が認められない限り、株式を無償で付与されたことによる経済的利益は株主となった日に確定したとみるのが相当であるとした。

次に、審判所は、請求人がケイマンLDCから受領した金員を本件株式の配当と認定したうえで、本件株式には少なくとも利益配当請求権があり、その経済的価値が本件株式の譲渡(本件権利行使)以前に実現していたと指摘。利益配当請求権があったと認められる以上、本件付与日に請求人が本件株式の経済的利益を取得したとは認められない特段の事情があったということができないため、本件株式に関する経済的利益の収入すべき時期は本件付与日(平成22年12月)であると判断し、原処分庁の主張を斥けた。

(情報提供:株式会社ロータス21)