• 「住宅用地の特例」の適用がある居宅敷地の地積を過少評価して固定資産税を賦課徴収していた東京都に対し損害賠償を命じる判決(東京地裁平成28年1月27日)。
  • 法令所定の申告義務を怠ったことなどから納税者の過失を認定(過失相殺3割)。過納付分の70%相当額と弁護士費用分(合計約113万円)の支払いを都に対し命じる。

事実関係をみると、納税者が所有していた本件土地は、住宅用地の特例の適用がある居宅敷地部分と特例の適用がない駐車場敷地部分で構成されていた。

この本件土地の評価の際に都税事務所は、本件土地およびその隣地にまたがって存在していた駐車場敷地の地積を本件土地とその隣地に按分する際にその地積比率を取り違えたため、本件土地のうち特例の適用がない駐車場敷地部分が過大評価される一方で、特例の適用がある居宅敷地部分が過小評価されていた。このミスにより納税者は、平成6年度から平成25年度まで本件土地に関する固定資産税等を過大に納付することになった。しかし、都税事務所は、平成21年度から平成25年度までの過納付分の還付等に応じる一方で、平成6年から平成20年までの過納付分約156万円の還付には応じなかった。これに対し納税者は、本件土地の固定資産税等の賦課徴収は国家賠償法上違法であると主張して、東京都に対し過納付分などの損害賠償を請求した。

裁判所は、まず、都税事務所が駐車場敷地の地積を本件土地およびその隣地に按分する際に地積比率を取り違えて居宅敷地部分の地積を過少評価した点について、担当職員に職務上の注意義務違反があったと判断したうえで、平成6年度から平成20年度までの固定資産税等の過納付分約156万円が納税者に生じた損害であると認定した。

一方で、裁判所は、①納税者が旧アパートを取り壊して駐車場とした際に、地方税法および都税条例が義務付ける住宅用地から非住宅用地への変更申告を怠ったこと、②本件土地の課税明細書を受領していながら非住宅地積の認定地積と実際の地積との相違に気付かず是正の措置を取らなかったことを指摘。この点について裁判所は、原告には過納付発生とその拡大に関する過失があったと指摘し、納税者の過失割合を3割と認定した。そのうえで、平成7年度から平成20年度までの過納付額(平成6年度の損害賠償請求権は民法所定の除斥期間20年の経過により消滅)について過失相殺(3割)後の約103万円、弁護士費用相当額10万円の支払いを東京都に対し命じた。

(情報提供:株式会社ロータス21)