• 異議申立て時に行われていない処分に対する異議申立てが適法かどうか争われた裁決で、異議決定までに当該処分が下された場合には適法であるとの判断。
  • 申立て時に対象とする処分が存在しない異議申立ては不適法とする一方で、その後、異議決定までに処分が行われた場合には、不適法であった瑕疵が治癒されると解釈。

請求人は、自身が所有する不動産の公売において、原処分庁の公売公告および見積価額公告を経た最高価申込者決定処分後に、いまだ行われていない売却決定処分に対する異議申立てを平成26年9月12日に行った。その後、請求人の異議申立てが対象とした原処分庁による売却決定処分が同月17日付けで、異議審理庁の異議決定が同年11月17日に下された。今回の事案は、申立ての段階でいまだ行われていない処分に対する異議申立てが、異議決定がされるまでの間に当該対象である処分が下された場合、適法であるのか否かについて争われた事案である(平成27年12月1日裁決)。

原処分庁は、請求人の異議申立てが売却決定処分の前に行われ、申立ての時点でいまだ行われていない売却決定処分を対象としており、明らかに不適法であるとした。それに対して請求人は、異議申立て時に売却決定処分は存在しなかったものの、異議決定時には処分が下されて存在するに至ったのであるから、当該異議申立ては売却決定処分が行われて以降、適法であると主張した。

国税不服審判所は、請求人の異議申立てに関し、申立ての対象となるべき売却決定処分が異議申立て時に行われておらず、処分が存在しないにもかかわらず当該異議申立てが行われたとして、申立て時において不適法と判断。しかし、その後、異議決定されるまでの間に、異議申立ての対象となるべき売却決定処分が行われた場合には、当該時点では処分が存在することになるため、申立て時において不適法とした瑕疵は治癒されたものと解されるとした。

また、最高価申込者決定処分が既になされている状況では、公売公告の売却決定処分が行われる蓋然性が極めて高いこと等を挙げて、売却決定処分前に行われた同処分に対する異議申立てを、一律に不適法とするのは申立人にとって酷であるとした。

よって、最高価申込者決定処分後に、いまだ行われていない売却決定処分に対する異議申立てをし、異議決定までに売却決定処分がされた時には、当該申立てが売却決定処分に対する異議申立てとして、適法になると解するのが相当であると結論付けた。

(情報提供:株式会社ロータス21)