• 所得拡大促進税制をめぐり、期限内申告書に控除明細書を添付していなかった原告法人が更正の請求による特別控除の適用を求めていた税務訴訟で、原告法人が敗訴(東京地裁平成28年7月8日判決)。
  • 地裁、同税制には当初申告要件があり、当初申告書に控除明細書の添付がない以上、法人税額の特別控除は適用できないと判断。

「所得拡大促進税制」は、雇用者給与等の支給額について3つの要件(①支給額の総額が基準年度から一定割合以上増加すること、②支給額の総額が前事業年度以上であること、③平均給与等支給額が前事業年度を上回ること)を満たした場合に、支給増加額の10%を税額控除することができるというもの(措置法42条の12の4)。

この適用を受けるためには、雇用者給与等支給増加額及び控除を受ける金額を確定申告書等に記載するとともに、その金額の計算に関する控除明細書を添付しなければならない旨が規定されている(措置法42条の12の4④)。

今回紹介する裁判事例のなかで原告法人(納税者)は、平成26年3月期の法人税について、確定申告書(青色)を期限内に提出していたものの、同申告書に措置法規定の控除明細書を添付していなかった。

原告法人は平成26年6月、所得拡大促進税制に関する本件特別控除の適用を失念したとして、税務署に対し更正の請求(更正請求書には控除明細書を添付)を行った。

しかし、税務署は、確定申告書に控除明細書の添付がなかったことなどを理由に、更正をすべき理由がない旨の通知処分を行っていた。この処分を不服とした原告法人は、更正請求書のみに控除明細書の添付がある場合であっても、同明細書の記載された雇用者給与等支給増加額と控除を受ける金額に基づき本件特別控除が適用されるべきであると主張し、裁判所に対し通知処分の取り消しを請求した。

これに対し裁判所は、本件特別控除によって控除される金額は中間申告書及び確定申告書に添付された書類に記載された雇用者給与等支給額を基礎として計算した金額に限られると指摘。中間申告書及び確定申告書に控除明細書の添付がなければ本件特別控除により控除される金額はないことになり、本件特別控除の適用を受けることはできないという判断を示したうえで、原告法人の主張を一蹴する判決を下している。

所得拡大促進税制の適用失念は、税賠訴訟に発展する可能性もあるだけに、顧問税理士は同税制の適用の可否について確実なチェックを行う必要があるといえそうだ。

(情報提供:株式会社ロータス21)