• 国税庁の国際課税に対する取組みなどを示す「国際戦略トータルプラン」が公表。
  • 富裕層PTは、平成29年7月から全国の国税局等に拡大。超富裕層を重点管理富裕層として情報収集等。
  • 平成27年分国外財産調書の提出件数は8,893件にとどまる。

国税庁は10月25日、「国際戦略トータルプラン―国際課税の取組の現状と今後の方向―」と題した報告書を公表した。パナマ文書やBEPSプロジェクトによって国際的な租税回避等が注目を浴びる中、国際課税に対する国内外の取組みの現状や今後の方向性について取りまとめたものだ。取組みとして、①情報リソースの充実(国外財産調書の活用等)、②調査マンパワーの充実(富裕層PT拡大等)、③グローバルネットワークの強化(租税条約等に基づく情報交換等)を掲げ、これらを推進し、課税上問題がある場合には、積極的に調査等を実施するなど適切に対処していくとしている。

取組みのうち、平成26事務年度から、東京、大阪、名古屋の各国税局に設置されている重点管理富裕層プロジェクトチーム(富裕層PT)については、平成29年7月(平成29事務年度)から全国の国税局等に拡大する方針を明らかにした。富裕層PTでは、富裕層の中でも特に多額の資産を保有していると認められる納税者を重点管理富裕層とし、その関係者や主宰法人、関連する法人を管理対象者グループとして一体的に管理して情報を収集し、分析・検討を行った上、調査を行っている。

国税庁では、富裕層に対する取組みを重点課題としており、従来から資料情報の収集や調査等を実施している。平成27事務年度における富裕層の調査では、調査件数が4,377件(前事務年度4,361件)と微増であったが、申告漏れ所得金額は516億円(同390億円)と大幅に増加している。

また、情報リソースの充実では、国外送金等調書(平成10年4月施行)のほか、国外財産調書(平成26年1月施行)及び財産債務調書(平成28年1月施行)の積極的な活用を掲げている。国外財産調書の提出件数に関しては、平成27年分で8,893件(平成26年分は8,184件)にとどまっている。国税庁では対象者にも関わらず未提出分があるとの認識を示しており、今後も文書の「お尋ね」などを送付することにより提出を促すとしている。

なお、国外財産調書については、正当な理由がなく提出期限内に提出しなかった場合などには、罰則(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)が設けられているが、現時点で罰則が課された例はないという。

(情報提供:株式会社ロータス21)